飼っている猫が下痢や軟便になってしまうと、飼い主さんは「何か悪い病気では?」と心配になるものです。

猫の下痢には自然に治ってしまうものから深刻な病気のサインとして現れるものまで、さまざまなケースがあります。

猫が下痢をする時~まず考えられる原因

飼われている環境や猫の体質など、病気以外でも起こる下痢の原因として考えられるものを挙げてみました。

たいていの場合、安静や獣医師による投薬によって治まるものですが、治療中は経過をよく観察し、必要があればすぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。

ストレスによるもの

引っ越しによる環境の変化や、新しい猫を迎え入れた時など、猫はストレスから下痢になることがあります。

気が向いた時にたっぷり相手をしてあげる、安心できるスペースを確保するなどの対応をしながら、少しずつ猫が変化に適応していくのを待つことで、自然に治ることが多いと言われています。

食事の変化によるもの

いきなりフードを変えると、今までの食事に慣れていた体が新しい成分に対応できず、消化不良による下痢を起こすことがあります。

キャットフードを変える時は、最初は今までのものに少しだけ混ぜ、徐々に量を増やして行き、1~2週間かけて完全に切り替えるようにしましょう。

ライフステージによるもの

子猫期

ミルクを与える場合は必ず市販されている子猫用のミルクを与えるようにしましょう。

人用の牛乳には猫が分解できないラクトーストいう成分が入っていて、飲ませると下痢の原因になります。

高齢期

年齢を重ねるとともに免疫力が低下し、下痢を伴う内臓疾患なども発症しやすくなります。消化酵素も減少するので、消化に負担がかからないシニア用フードに切り替えることが必要です。

腸内細菌のバランスが崩れて若い頃よりお腹の調子を崩すことも増えてくるので、猫用の乳酸菌サプリで腸内環境を整えてあげるといいでしょう。

7歳を過ぎたら、毎年定期的に動物病院で健康診断を受けるようにします。

食物アレルギーによる下痢

猫は本来肉食なので、小麦やトウモロコシなどの炭水化物は消化器に負担がかかり、アレルギー反応を起こしやすいと言われています。

卵や肉などのたんぱく質にアレルギー反応を起こす猫もいるので、下痢や軟便が続くようなら一度動物病院で検査してもらうとよいでしょう。アレルゲンとなる食品を特定し、食事から排除することで治まってくるはずです。

寄生虫

猫回虫、猫鉤虫、コクシジウムなどがありますが、特に猫鉤虫、コクシジウムは下痢や血便を引き起こします。

駆除にはある程度の時間がかかりますが、放置すると寄生虫が脳に回って生命の危機に陥ることもあるため、排泄物に虫のようなものを見つけたら、すぐに病院で処置してもらうようにして下さい。

感染症が原因の下痢

左奥を見つめる猫

猫の感染症には下痢を伴うものが多くあります。

子猫は体力が弱く免疫力が低いため、感染症にかかると症状が重くなりやすいので、特に注意が必要です。

抗生物質の投与でも回復が見られず、軟便や下痢が長引く、症状が悪化していく場合、以下のようなウイルスに感染している可能性があります。

猫コロナウイルス感染症

猫コロナウイルスに感染すると、初期に下痢の症状を起こします。

この段階では比較的症状が軽く、感染しても殆どの猫たちは回復し、体内にウイルスを持ち続けた状態で健康な生活を送ることができます。

しかし、一部の猫はウイルスの突然変異が原因で、伝染性腹膜炎(FIP)を発症することがあります。

FIPになると、炎症が腸などの消化器官以外の臓器や血管にも広がり、発熱、貧血、胸やお腹に水が溜まるなど、下痢や嘔吐以外の重篤な症状が現れます。

致死率が非常に高く、有効なワクチンや治療方法がないのがこの病気の最も恐しいところです。

猫パルボウイルス感染症

猫凡白血球減少症とも呼ばれ、血が混ざってネバネバした、独特の臭いのする下痢が特徴です。

嘔吐や下痢から血便になり、致死率は極めて高いとされています。

幸いなことにワクチンがあるので、摂取することで感染を防ぐことができます。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

感染したばかりの「急性期」には、口内炎や発熱と共に下痢の症状も見られます。

体力があり健康な猫なら回復も望めますが、子猫や老猫、病気などで免疫力が落ちている猫が感染した場合、一時的に症状が治まっても「持続感染」という、体内にウイルスを持ち続けている状態になります。この場合、殆どのケースが2~3年で悪性リンパ腫に移行し、命を落とすことになります。

ワクチンはあるのですが、完全に予防を期待できるものではないようです。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)

感染直後に下痢の症状があります。

この病気の進行にはいくつかのプロセスがあり、それに応じて口内炎や皮膚、呼吸器や消化器管疾患、リンパ節が腫れるなどの症状が現れ、末期には猫伝染性腹膜炎や悪性腫瘍も併発しやすくなります。

ワクチンはあるのですが、ウイルスのタイプが複雑なため、予防率は低いとされています。猫によっては強い副作用の可能性もあり、接種には慎重にならざるを得ないようです。

猫の下痢を伴う深刻な病気

猫の下痢が長引き、治療を受けても症状がなかなか改善されない場合、次のような深刻な病気が潜んでいる可能性もあります。

炎症性腸疾患(IBD)

知名度はまだまだ低いようですが、最近はこの病名を聞くことも増えてきました。

治療をしても下痢や軟便、嘔吐などが治まらず、血液検査で白血球の数値が異常に高いのに原因がはっきりしない場合、この病気が疑われます。

実際、この病気の原因は解明されておらず、予防策がないのが現状です。

診断には腸など患部の細胞を採取して検査することが必要になり、猫にとっては負担が大きいものの、放っておくと肝機能の低下とともに大腸や小腸の炎症が悪化し、食事を摂っても下痢や嘔吐で栄養を取れなくなり、痩せ衰えて最終的に死に至ります。

ステロイド治療を中心とした医師による適切な治療がなされれば、かなりの確率で回復し、良好な状態を維持しながら寿命を全うする猫も多くいます。

IBDが悪性リンパ腫に移行するケースもしばしばあるので、定期的に検査をして異常がないか確認し、獣医師監修のもとで再発を防ぐように努めましょう。

消化器型リンパ腫

腸管などの消化器系にリンパ腫ができた場合、下痢や嘔吐などの症状が現れます。

リンパ腫には進行が速く症状が重篤なハイグレード型と、比較的ゆっくりなローグレード型があり、消化器型リンパ腫はローグレードタイプが多いようです。

この場合、抗がん剤とステロイド剤を併用した治療によって症状の緩和が期待できます。

高齢猫に発症しやすいと言われていますが、猫白血病ウイルス感染症が引き金になってリンパ腫に移行するケースが多いようです。

猫の下痢~飼い主さんに知っておいて欲しいこと

飼い主さんが猫に下痢をさせないために普段からしておくこと、下痢をした時のために知っておくべきことを挙げておきます。

ウイルス感染予防対策

ウイルスは外猫との接触で感染するケースが殆どなので、完全室内飼いは最も有効な予防策といえます。それでもまれに、飼い主さんが履いた靴などを介して外部からウイルスが持ち込まれることもあります。

帰宅するたび靴の裏に市販のアルコールスプレーをかけておく、晴れた日にお日様に当てて日光消毒するなど、消毒や除菌を心がけることが大切です。

危険なものを置かない

猫は寝ているとき以外はとても活発で、狭い場所に入り込んだり高い場所に上ったりします。その為、うっかり置きっぱなしにしていた洗剤や化学薬品を舐めたり、毒性が強い植物や野菜を食べて下痢を起こすことがあります。

観葉植物、猫にはタブーな食べ物(チョコレート、ネギ類、ニンニクなど)、ボタン電池のようにじゃれているうちに飲み込みやすい危険なものは、猫が絶対に触れないようにしっかり管理し、飼い主さんの不注意による下痢や中毒、誤飲が起こらないようにしておきましょう。

検便の準備をしておく

猫がひどい下痢をすると慌ててしまい、すぐにでも動物病院に駆け込みたくなりますが、忘れてはいけないのが「病院に便を持参する」ことです。

大抵の場合、病院の便検査でウイルスや細菌の状態を調べ、下痢の原因が特定できるので、獣医さんも治療がしやすくなります。

検査で使う便は、形がない状態でも小指の第一関節くらいの量があれば充分です。

コンビニやスーパーでスイーツ用の小さなスプーンをもらったら、捨てずに洗って取っておくと重宝します。便を取ってスプーンごとビニール袋に入れ、ゴムなどで口を縛り、なるべく早くそのままの状態で病院に持っていきましょう。

水分補給はしてもいい?

動物病院が診察時間中ならいいのですが、そうでない時は診察を受けるまでにいつもより時間がかかり、その間家で経過を見ることになります。

下痢や嘔吐がひどいと、「脱水症状に陥るのでは?」と心配してすぐにお水をあげるようにしている飼い主さんも多いのではないでしょうか。

重要なのは、嘔吐直後は胃がまだ収縮状態であるため、すぐに水を飲ませることによって更に吐いてしまい、飲んだ刺激は下痢で敏感になっている腸に伝わりやすいので、腹痛や下痢をひどくするということです。

下痢や嘔吐が治まってから、少なくとも3時間は絶水した方がいいとされています。どうしても無理なようであれば、最低でも1時間待ちましょう。

3時間以内に病院に行けるのであれば、敢えてお水は与えず、点滴で水分補給してもらうのが最も効果的です。